読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

たれながし

大学生(19歳・男)の頭の中がventig。

web小説「有害なる独身貴族」をレビュー

2,3週間前に読んだ作品だったので、少し見返しつつ感想を。

 

小学生で自殺しかけた時に「生きろ」と言ってくれた男と、大人になったから再会した女の子の話。男のたった一言の言葉だけを励みに不遇な子供時代を耐え抜いた女の子は再会した男に恋焦がれるが、相手は自分のことを覚えていないよう。それでも近くに居られるだけでいいと割り切るが、だんだんと二人は接近していく。

 自分は「ヤンデレ」や「嫉妬」というジャンルが大好きなので、まさしくドンピシャっていう感じだった。「ヤンデレ」系作品では、なぜそれほど強烈な愛情を抱いたのかという問いに対して納得できる答えがなければ感情移入できない。そこがヤンデレ系作品が面白くなれるかの分水嶺だと思う。その点、この作品は非常に説得力がある。

救いようのない悲惨な環境から救い出すヒーローという最も説得力のある構図を、読むと心がチクチクするほど生々しく、強烈に描けているのだ。自殺寸前にまで追い詰められていた小学生時代から大人になるまでの間、一つの言葉を頼りに生きてきたのだと言われれば自ずと納得してしまう。

また一方で、女の子と男が10年以上会っていないという特殊な状況を作り出すことで、微妙な距離感を演出することに成功した。大概のヤンデレ系作品では幼馴染や兄弟など常に共に過ごしていた者同士が描かれる。この作品は、一度しか会ったことがなく・10年以上行方も分からず・相手は自分を覚えていないという特殊な状況での、主人公の女の子の剥き出しの行き場のない熱い感情に読者は翻弄されるのである。